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社会福祉法人一峰会(和歌山県海南市)

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社会福祉法人一峰会(和歌山県海南市)

一峰会の概要

 一峰会は、ぱん工房かたつむり(就労継続支援B型事業)、おかし工房桜和(就労継続支援B型事業)、あすなろ(就労継続支援B型事業、自立訓練・生活訓練事業 )、あすの実(就労継続支援B型事業)等の障がい者就労支援事業を展開する社会福祉法人である。この他にも、障がい者サポートセンターにじ(相談支援事業)、グループホーム日向(共同生活援助事業)を運営する。

 法人の原点となるのは、1985年に始まった小さなプレハブ小屋の無認可作業所「かいなん福祉共同作業所」である。その後、2001年には社会福祉法人一峰会を設立。知的障害者通所授産施設(当時)「かたつむり共同作業所」を開所することになった(その後、分場として「かたつむり共同作業所分場桜和」も開設)。

 この流れとは別に、精神障がい者を対象とした無認可共同作業所「海南ワーク」も始まっていたのだが、2006年に一峰会に合流することになり、精神障害者通所授産施設(当時)「あすなろ共同作業所」がスタートした。

 2010年に新体系へ移行する際に、「かたつむり共同作業所」を「ぱん工房かたつむり」、「かたつむり共同作業所分場桜和」を「おかし工房桜和」と改名。主力事業であるパンやバウムクーヘン(焼き菓子)を前面に打ち出すことによって、事業所の活動内容が誰にでもわかるようにした。2018年には「あすなろ共同作業所」の事業改革にも着手し、働くことを目的とした「あすなろ」と、障がいの重い方のための居場所兼軽作業を提供する「あすの実」に分割している。無認可共同作業所からスタートした法人事業は、こうして現在の形へ整えられていった。

社会福祉法人一峰会(和歌山県海南市)
社会福祉法人一峰会(和歌山県海南市)

4つの作業分野で利用者に働く場を提供する「あすなろ」

 こうした設立の経緯から、精神障がい者が中心となって働く「あすなろ」では4つの作業分野で利用者たちに働く場を提供している。1つは、企業からの下請け軽作業である。たくさんの仕事があるのだが、代表的なのは蚊取り線香関係の仕事だろう。事業所がある和歌山県は蚊取り線香発祥の地であり、海南市にも大きな蚊取り線香工場がある。そのため、シーズンになると毎年大量の作業(携帯型蚊取り線香ケースの組み立て等)を定期的に請け負っている。

 2つ目は、クリーン隊(清掃作業)である。ビルの廊下・トイレ・事務室のゴミ集め、寺の庭・トイレなどの清掃を担当する。施設外就労として、4〜5人が1ユニットなって職員と一緒に地域のさまざまな拠点に出かけて作業を行っているのだ。

 3つ目は、役立ち隊。草刈り、農作業や引っ越しの手伝い、寺の墓掃除…等々。地域から頼まれるあらゆる困りごとに対して可能な限り人手を提供する、いわゆる「便利屋」である。

 4つ目が、農産加工。切り干しダイコンなどの乾燥野菜や、イチジク・柿・イチゴ・キウイなどのドライフルーツを、企業からの委託によって生産する。法人内の他事業所(おかし工房桜和)のバウムクーヘン材料となる温州みかんの濃縮果汁を作るのも、あすなろ農産加工グループの担当だ。

「利用者さんの工賃は、どの仕事を担当したかによって大きく異なります。最も高いのは、役立ち隊の時給720円。そしてクリーン隊の420円、農産加工の300円、下請け加工の200円となっています。役立ち隊の仕事はとても利益率が良く、お客さんからの評価も高いのですが、残念ながら担当できる利用者さんが2人だけ。反対に下請け作業を担当する利用者さんは30人と多いにも関わらず、こちらは利益率がとても低いのです。取り組みたい仕事と、担当できる利用者さんのバランスが悪いのが、当事業所の1番の問題点だと痛感しています」と、管理者の内匠(たくみ)一彰さんは正直な悩みを打ち明ける。

社会福祉法人一峰会(和歌山県海南市)
社会福祉法人一峰会(和歌山県海南市)

月額平均工賃を支えているのは、役立ち隊だが…。

 たとえば役立ち隊の代表的な仕事に、寺院の墓掃除があるという。そこは、毎日通って掃除しても2週間はかかるほどの広大な敷地である。急斜面のため、掃き掃除をするだけでも体力を相当消耗するが、1回の作業料は50万円。利用者2名+臨時サポート1名、職員2名で担当するので、日当にすると約1万円という非常に有難い仕事だ。

 梅の産地としても有名な和歌山県のため、シーズンになると近隣農家から梅の収穫の手伝いも要請される。その他、庭の雑草刈りなどもひんぱんに発注される。庭木の剪定ができる利用者がいるために、単純な清掃より高度な要望にも対応できる。高齢世帯の引っ越しサポートも人気のサービスである。

 こうした話を聞くと、あすなろの月額平均工賃を向上させるには役立ち隊を拡充させれば良いと考えがちだが、事はそう単純ではないらしい。精神障がい者が主体という事業所の特性ゆえ、求められる仕事のスキル、体力、安定した出勤率…という観点から、役立ち隊に参加できる利用者の数はなかなか増えないのが現状なのだ。

「日当を高くもらえるということは、それだけ高度な仕事を担当している証拠です。同じレベルの仕事をこなせる利用者さんを増やすことは難しいと感じており、むしろみんなが取り組みやすい仕事を増やしていく方向を模索しています」と、内匠さん。

 具体的に言うと、クリーン隊の仕事を増やしていくことだという。現在、毎日4人のチームが市内各所を回って簡単な掃除を担当しているわけだが、ビルやマンション清掃の仕事は委託清掃員の高齢化もあって、少しずつ依頼が増えている。人件費を変えることなく複数の利用者を派遣できることから、発注先をあすなろに変えることによって仕事の質が上がったと喜ばれているのだ。ここにさらにプラスαの価値、役立ち隊のエッセンスを少し加えたサービスを提供できれば、受注単価の向上に加え、参加できる利用者も増やせるはず──これが、内匠さんが考える構想なのである。

社会福祉法人一峰会(和歌山県海南市)
社会福祉法人一峰会(和歌山県海南市)

良質な仕事確保のために必要な、法人全体の取り組み

 もう一つ鍵となるのが、下請け作業の見直しだろう。仕事量はそれなりに確保され、担当できる利用者数が最も多いチームではあるのだが、仕事の種類によっては現在の時給でも赤字になってしまうケースすらある。あすなろの現在の月額平均工賃(20,285円/2022年実績)を支えているのは、2人の利用者が支える役立ち隊の仕事のおかげであり、これがもし崩れると根本的な事業改革が必要になってしまう。

 そこで検討されているのが、法人全体として内職仕事を生み出すことだという。幸いにして、他事業所(おかし工房桜和)では道の駅や高速道路サービスエリアなどでも好調な売れ行きを誇っている「紀州五色バウム」などの魅力的な洋菓子がある(第7回スウィーツ甲子園グランプリ受賞)。和歌山県を代表する有田みかん、地元産のみかん花蜂蜜、紀州備長炭、和歌山県那智勝浦町色川地域で栽培される色川緑茶など、おかし工房桜和で製造されているバウムクーヘンは、地元和歌山の厳選素材を活かした素晴らしい商品ラインアップばかりだ。引き続きこうしたヒット商品開発や販路拡大を目指し、包装・配送などの関連業務を事業所間で補完し合おうという発想である。

「商品開発や販路拡大を目的として、法人全体として専門のコンサルタントと契約しているおかげで、和歌山土産としても注目されている人気商品が続々と生まれています。事業所単独で考えるのではなく、これからは法人内事業所が協力し合うことで、お互いの仕事を生み出していく。そんな発想で取り組んでいく必要があると思います」と、内匠さん。

 一峰会が目指すのは、「障がいがある人たちとともに、福祉を通じた『人と、寄り添う』社会を願い、まちづくりを広げていく」ことである。法人名の由来でもある一峰山のように、おおらかで緩やかに連なり合う。その麓にある亀池(江戸時代に大勢の人の手によって造成されたため池)のように、地域の人たちの暮らしに豊かさをもたらしていく──。あすなろではこれからも、利用者と地域の人たちを結び付けながら、障がいのある人たちの働く場を増やしていく予定だ。

社会福祉法人一峰会(和歌山県海南市)
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(写真提供:社会福祉法人一峰会、文:戸原一男/Kプランニング

【社会福祉法人一峰会】
http://ichiminekai.com

※この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時(2024年01月05日)のものです。予めご了承ください。