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社会福祉法人沖縄県身体障害者福祉協会(沖縄県島尻郡八重瀬町)

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社会福祉法人沖縄県身体障害者福祉協会(沖縄県島尻郡八重瀬町)

沖縄県身体障害者福祉協会の概要

 沖縄県身体障害者福祉協会は、障害者支援施設太希おきなわ(就労継続支援B型事業、生活介護事業、施設入所支援事業、短期入所事業)、就労支援センター太陽の町(就労継続支援B型事業)、共同生活援助事業所おきしんきょう(グループホーム)、相談支援事業所・沖身協(特定相談支援事業・障害児相談支援事業)等の障がい福祉事業を行っている社会福祉法人である。

 法人の設立は、1972年に遡る。沖縄本土復帰という歴史的な時期に、(本土法の適用によって)社会福祉法人を設立。それまで障がいのある人たちの更生相談及び啓発普及等を展開していた沖縄身体障害者団体連合会を発展解消し、沖縄県身体障害者福祉協会を発足。就労訓練や生産活動にも取り組めるようにした。こうして旧・身体障害者授産施設「おきなわ希望の家」(沖縄傷痍軍人会が運営していた沖縄身体障害者職業指導所を移管)、旧・重度身体障害者授産施設「おきなわ太陽の町」が開所されたのである。

 2009年の新体系の導入に伴って二つの事業所は「太希おきなわ」(太陽の町の「太」と希望の家の「希」を併せて命名した)に合併することになったが、2021年には「就労支援センター太陽の町」は「太希おきなわ」から分園している。

社会福祉法人沖縄県身体障害者福祉協会(沖縄県島尻郡八重瀬町)
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「太希おきなわ」のシンボル、琉球みやらびこけし製造

 それでは、太希おきなわの作業内容について見ていこう。事業所を代表するのが、琉球みやらびこけしの製造である。法人の設立時から、半世紀にわたって技術が引き継がれてきた伝統ある仕事だ。その経緯について、施設長の伊佐直樹さんは次のように説明する。

「事業所が開所したのが沖縄本土復帰の年だったので、沖縄の事業振興の一環として新しい観光プロジェクトが始まりました。その一つが、琉球こけしづくりです。当時南方同胞援護会だった職員(大司盛一氏)から指導員が技術を学び、利用者に伝えていきました。当時は一般企業も含めた複数の工房でこけし生産が行われていましたが、生産者の高齢化もあって次第に減少し、現在も続いているのは私たちの事業所だけです」

 製作しているのは、花笠と紅型琉球姿の「四つ竹」、カゴを頭にのせた魚売りの「糸満娘」、琉球絣を着た「絣帯」、「四つ竹琉球松」、「絣帯琉球松」、こけしの体にメッセージ用の紙が巻かれた「はいさいどーる」の6種類である。派手やかな色使いと、スリムな体型、頭に傘やカゴをかぶった形など、どれも沖縄らしい雰囲気を醸し出している。生産が始まった3年後には沖縄海洋博が開催されたため、琉球みやらびこけしは沖縄土産として大人気を博した。作っても作っても生産が間に合わず、工房では徹夜して作業する人たちもいたほどだという。海洋博後には落ち着いたものの、2019年に県内バンドの歌を元にした映画「小さな恋のうた」ではいさいどーる(さよならドール)が登場したときには、ブームが再燃。ネット販売を通じて県外からの注文も爆発的に増えている。

 「デザインも、少しずつ変わっているんです」と、工賃向上達成指導員の金城大輔さんは言う。「バラバラだったサイズを、現在では25㎝に統一しました。とくに大きいのが、目の変化です。当初は切れ長の目を描いていたのですが、沖縄の女性はもっとパッチリしています(笑)。そこで1993年頃から現在のような目に大きく変え、より沖縄らしさを感じてもらえるようになりました。2010年には在留米軍基地婦人会の方からのアイデアで、さまざまなメッセージを記した巻物をこけしの胴体に巻いたハイサイドールを開発し、これは今でも大ヒット商品になっています」

 こうした努力もあり、太希おきなわの琉球みやらびこけしは現在でも、着実に売れ続けている。絵付けなどの職人作業に携わる利用者には、その道50年という大ベテランもいる。下書きなしでこけしに筆入れする技術は、作業を指導する職員でも歯が立たないほどだ。残念ながら主原料であるエゴノキの不足によって需要に応えられない状況が続いているのだが、もはや沖縄の伝統産業にもなったこけしづくりを担っていることに、担当者たちは誇りをもっている。若い後継者をじっくりと育てつつ、今後もこの作業は続けていくつもりだと語ってくれた。

社会福祉法人沖縄県身体障害者福祉協会(沖縄県島尻郡八重瀬町)
社会福祉法人沖縄県身体障害者福祉協会(沖縄県島尻郡八重瀬町)

工賃を大幅にアップさせたパン事業

 琉球みやらびこけしと並んで今や事業所を代表する事業に成長しているのが、パン事業である。当初は、糸満市内の住宅街のアパートの1階部分を借りてパン工房としたのだが、賃貸料が高く、苦しい事業展開を強いられた。そこで都市部からは離れるものの、本体施設へと移転(2015年)して移動販売中心へシフトしたところ、見事に成功した。それ以降、売上、利益ともに増加の一途を辿っていったのである。

 「現在、町内の高齢者施設、学校、行政機関など約50カ所の取引先があり、駐車場や入口などに臨時店舗を構え、毎日交代で販売させてもらっています。1日の売上は、最大で7万円を超えるときもあります。人気のホテルブレッドを始めとする約40種類のパンを販売しているのですが、移転してからハンバーガーや調理パンを製造できるようになったのが大きいですね」と、サービス管理責任者の玉那覇リエミさん。

 とくにハンバーガーは、大ヒットメニューなのだという。月見バーガーとチーズバーガーの2種類があり、充分に食べ応えあるビッグサイズにも関わらず、価格は350円。パテもハンバーグも、卵焼きも、照り焼きソースに至るまで全てが手づくりだ。1回購入してくれたお客さんは病みつきになり、毎回のように予約注文してくれる方も増えている。

 「通常の移動販売に持っていくのは30個程度なのですが、いつもほぼ完売。事前に50個注文いただくと、ハンバーガーだけで約80個売れるわけです。単価が高い商品ですから、パン事業が好調なのは、ハンバーガーの成功のおかげです」と、金城さん。

 こうして月間売上高は290万円を超える(2023年12月実績)など、過去最高を更新し続けているという。これまでの月平均売上高は250万円程度だったので、約116%増の計算になる。2020年から続いたコロナ禍にはさすがに実績の半額程度まで下がってしまったそうだが、今や完全に回復したといっていい。このまま推移すれば、月額平均工賃も現在の27,000円(2022年度実績)を大幅にアップできるのではないかと伊佐さんはうれしそうに語っている。

社会福祉法人沖縄県身体障害者福祉協会(沖縄県島尻郡八重瀬町)
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「やえマルシェ(仮称)」の開催を目指し、町内事業所みんなで協力していきたい

 もう一つの作業の柱が、「なんでも班」と呼ばれる企業からの軽作業受託である。トタン釘の組み立て、交通安全ポスターの梱包発送作業、ウエスの梱包作業等、その名の通りさまざまな仕事を「なんでも」引き受けている。利用者の中には片手麻痺の障がいがある方もいるが、作業のやり方を職員と一緒に考えながら取り組むと効率も上がり、手先が器用になっていくケースもあるという。

 今後の目標は、事業所内のコミュニケーションを今まで以上に高めることである。法人のテーマ「つながり きずな ほほえみ」を達成できるように、参加者全員が気軽に意見を出し合える風通しの良い職場にすることを目指している。それが結果的に、工賃向上にもつながることを伊佐さんたちは信じているのだろう。

 「私たちがもう一つ考えているのが、八重瀬町内にある複数の障がい者事業所が協力し、八重瀬町役場の駐車場を借りて『やえマルシェ』という共同販売会を開催することです。できれば毎月定期開催して、町内事業所が作っているさまざまな製品を販売したいのです。実際、沖縄県内では他の市町村で成功例もたくさんあります。それをぜひ八重瀬町でもやってみたいと事業所同士で話し合っているところです。助け合いという意味の沖縄言葉『ゆいまーる』をもじり、『やえまーる』を合い言葉にしました。八重瀬町の事業所同士が支えあい、マルシェを成功させたいと考えています」

 みんなで手を取り合いながら、ヨコにつながり、その中の一員として自分にできることを行っていこう──それが、太希おきなわが最終的に目指している世界だ。工賃向上という就労支援事業所の課題に向き合いながらも、つねに法人活動の原点も忘れない。明るく元気に「はいさーい!(こんにちは)」と挨拶を交わしながら、八重瀬町の仲間の輪を次々と広げていく。着実に成長する事業活動に、今後もぜひ注目していきたい。

社会福祉法人沖縄県身体障害者福祉協会(沖縄県島尻郡八重瀬町)
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(写真提供:太希おきなわ、文:戸原一男/Kプランニング

【社会福祉法人沖縄県身体障害者福祉協会】
https://www.okisin.jp
【沖縄みやらびこけし販売サイト】
https://yuimarluokinawaweb.jp/c/style/interior/interiorelse/6013kokeshi

※この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時(2024年03月01日)のものです。予めご了承ください。