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社会福祉法人親泉会(青森県八戸市)

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社会福祉法人親泉会(青森県八戸市)

親泉会の概要

親泉会は、多機能型事業所こだまの園(就労継続支援B型事業、生活介護事業)を運営する社会福祉法人である。この他にも、レストこだま・レストこだま2(短期入所事業)、グループホームこだま(共同生活援助事業)、ピュアこだま・第二ピュアこだま(放課後等デイサービス事業)、相談支援センターこだまの園(相談支援事業)、日中一時支援事業等の障がい者支援事業も展開している。

 施設の始まりは、1989年に八戸第二養護学校(当時)父兄の有志「こだまの会」が立ち上げた小規模作業所「こだまの園」だった。障がい児の親である阿部弘子さん(現・親泉会理事長)たちが中心となって資金集めや用地確保に奔走し、「子どもたちに働く喜びを体験してもらう」ための職場を完成させた。焼き菓子製造、段ボール組み立て等の仕事を懸命にこなしながら実績を作り、2001年には社会福祉法人を設立。知的障害者授産施設(当時)こだまの園が誕生したのである。

 そんな背景があるため、「利用者のために」という阿部理事長の運営方針が徹底している。働きがいがあって毎日通いたくなり、親も安心して預けることができる職場──そんな理想をめざして、さまざまな活動を続けてきた。

社会福祉法人親泉会(青森県八戸市)
社会福祉法人親泉会(青森県八戸市)

地域の伝統にちなんだオリジナル製品

こだまの園を代表する製品といえば、青森冬の三大祭りとしても有名な八戸えんぶりの象徴・烏帽子(えぼし)の図案を型押しした「えんぶりえぼしクッキー」と、2009年に国宝に指定された合掌土偶を象った「はちのへ合掌土偶クッキー」だろう。どちらも地域の伝統にちなんだ土産菓子として、発売以来根強い人気を誇っている。

 「えんぶりえぼしクッキー」の細かな図案は、独自開発した型押し台で作られている。シリコン枠にクッキー生地を詰め、その上から人間国宝・鈴木敏信氏に依頼したという木版で押すことにより、えぼしの芸術的な牡丹花模様を表現できるのだ。「はちのへ合掌土偶クッキー」(合掌土偶の文様)は、さらに細かい。そのため南部鉄器の工房に依頼し、特注の型取り台を作ってもらったそうだ。八戸を代表する観光土産を作るなら、徹底して細かいところにまでこだわりたいという阿部理事長の執念の賜だろう。

「おかげさまで、発売以来2つの製品は大好評です。八戸駅に隣接する『おんであんせユートリーおみやげショップ』で取り扱われたのをきっかけに、現在では、博物館、土産物店、市内ホテル売店等、計4カ所で販売してもらっています。2つの製品はお土産に特化した箱入り製品ですが、その後、合掌土偶の焼き印を押した合掌土偶焼き菓子(丸型サブレ)も開発しました。こちらは単品での販売が中心なので、地元のお客さんにも気軽に購入してもらっています」と、サービス管理責任者の出雲梢さん。

 もっとも、2020年からのコロナ禍で八戸の観光業は大きな打撃を被ったため、「えんぶりえぼしクッキー」と「はちのへ合掌土偶クッキー」という2つの人気製品の売り上げも激減してしまった。最近少しずつ回復の兆しが見えるというものの、全盛時の勢いには遠く及ばない。これを補うためにも、近隣住民を対象とした各種パン・シフォンケーキ等の店頭販売、出張販売、委託販売等を組み合わせることで、売上減をカバーするように努力しているそうだ。

社会福祉法人親泉会(青森県八戸市)
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行政とのタイアップで始まったBDF製造事業

もう1つの事業の柱とも呼べる作業が、2005年からスタートしたBDF(バイオディーゼル燃料)製造事業である。家庭から出される天ぷら油などの廃食用油を回収し、専用の製造装置によってBDF燃料へと精製し、販売までを一貫して手がけている。

「八戸市では、以前から『廃食用油利活用事業』に積極的に取り組んでいます。市内10カ所(現在は9カ所)のスーパーマーケットに協力依頼し、廃食用油回収ボックスを設置して、一般家庭からの使用済み廃食用油を集めているのです。当初は、ボックスに集まった廃食用油の回収は他業者が受託し、回収した廃食用油からBDFを製造する作業が私たちに任されました」と、総括課長の小笠原基さん。行政からの委託業務のため、BDF製造装置も借りることができ、資金投資ほぼゼロで新しい作業が加わった。

「ゴミ減量」、「化石燃料(石油製品)の使用量削減」、「環境に優しい排気ガス」という3つの利点を掲げて八戸市が積極的に打ち出している施策のため、周知徹底された市民からも大量の廃食用油が集まってくるという。BDF生産能力も、当初の月産1,600リットル(ドラム缶約8本)から2,400リットル(ドラム缶12本)へと拡大。廃食用油の回収業務に関してもこだまの園が行うようになり、現在は廃食用油回収から製造・販売までをトータルで対応する体制となっている。

順調に事業が拡大しているように見えるBDF事業だが、課題も多いらしい。小笠原さんは苦しい胸の内を打ち明ける。

「ディーゼル車規制条例が強化された影響で、これに対応した最新型のクリーンディーゼル車が大半を占めるようになりました。しかしクリーンディーゼル車は、BDFを燃料にできないのです。もともとディーゼル車を走らせるために開発された燃料ですから、非常に厳しいことになりました。現在はご理解ある企業さんの協力で、工場用の発電機やショベルカーなどの重機に使ってもらい、売り先をなんとか確保している状況です」

行政からの製造委託業務も、2017年(平成28年度)で満了となった。現在はこだまの園が独自に購入した製造装置で、BDF生産を継続している。阿部理事長も、BDFの活用には新たな顧客開拓が不可欠だと訴える。

「昨今の度重なる電気・ガス代の値上げによって、燃料費の高騰に悩んでいる事業者はたくさんいると思います。ディーゼル車燃料としての役割は終わったのかもしれませんが、BDFの活用法は他にもいろいろ考えられるはずです。環境にも優しい素晴らしいリサイクル燃料なのですから、農業分野(ビニールハウスの温度管理用)など、まったく違った視点での活用法を見つけていきたいですね」

社会福祉法人親泉会(青森県八戸市)
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利用者たちに、働く喜びを知ってもらいたい

最近こだまの園に新たに加わった作業が、フリーズドライりんごの下処理作業受託である。八戸東洋株式会社から材料・包材・作業用手袋まで支給された上で、「リンゴの洗浄→皮剥き→カット→塩水漬け」までの事前処理を行うという仕事だ。現在は週に3日程度しか対応していないが、利用者たちにはとても喜ばれる作業となっているらしい。職業指導員の尾方美幸さんは語っている。
「パンや焼き菓子の製造工程は複雑ですし、熟練の技も必要なので、対応できる利用者さんがどうしても限られてしまいます。それと比べると、リンゴの加工作業は洗って切るだけの単純作業。でも同じことをコツコツ繰り返すことが得意な方には、達成感も感じられてとても楽しいみたいなのです。その証拠に、この作業に関わる利用者さんは、なかなか休まなくなりました(笑)。自分たちがカットした商品(フリーズドライりんご)をお店で見かけると、『これは、私がカットしたんだよ!』などと自慢しています」
 阿部理事長は、これが非常に大切なことなのだと訴える。休まないというのは、創設時から目指していた「仕事に誇りが持て、毎日通いたくなるような職場」になっている証拠だ。小規模作業所時代から続けている焼き菓子製造、段ボール仕切板組み立て等の作業に加え、パン製造、BDF製造、銅線作業、空き缶作業、農作業、除草作業……と、次々と作業種目を増やしてきたのは、ひとえに「すべての利用者たちに働く喜びを知ってもらいたい」という思いからだった。
 こだまの園の誕生から、約22年。現在、法人には就労の場、暮らしの場に加えて、生活介護の場づくりも求められてきたという。B型事業と一体運営している既存の生活介護事業(生産活動)ではなく、設備も完備した上で「入浴介助・機能訓練・生活訓練」を目的とする生活介護事業所の設立だ。人はみな、年をとっていく。障がいのある人はとくに、健常者よりも加齢による機能低下が著しい。だからこそ、それをしっかりサポートできる事業所が必要になってくるわけだ。「障がいのある人たちのために必要な活動は何か」を求め続ける阿部理事長の情熱は、これからもこだまの園を一歩ずつ前進させていくことだろう。

社会福祉法人親泉会(青森県八戸市)
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(写真提供:社会福祉法人親泉会、文:戸原一男/Kプランニング

社会福祉法人親泉会・こだまの園
https://kodamanosono.or.jp/

※この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時(2023年04月13日)のものです。予めご了承ください。