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社会福祉法人更葉園(北海道河東郡)

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社会福祉法人更葉園(北海道河東郡)

更葉園の概要

 更葉園は、おとわ(就労継続支援B型事業、生活介護事業、施設入所支援事業)、せせらぎ(就労継続支援B型事業、生活介護事業、施設入所支援事業、短期入所事業)、きらぼし(就労継続支援B型事業)、ひこぼし(生活介護事業)、なないろ(就労継続支援A型事業)等の障がい者支援事業を展開する社会福祉法人である。
 この他にも、きずな(小規模多機能型居宅介護事業所、地域密着型特別養護老人ホーム)、こころ(地域密着型特別養護老人ホーム)などの高齢者介護事業にも取り組んでいる。
 更葉園の障がい者支援の特色は、生産活動を通じた生活自立支援である。約25,320.93㎡を超える広大な敷地の中にはすべての事業所が建ち並ぶが、事業所ごとに作業内容を分けるのではなく、利用者全員がそれぞれの障がい特性に応じて仕事に取り組んでいる。
 現在の主な作業内容は、製袋(自治体の指定ゴミ袋製造)、印刷(年賀状やタオル印刷の他に一般印刷物)おとぷけ納豆製造、枕再生リサイクルの4種類が柱である。年間売上はトータルで3億3,000万円以上。本格的な大規模設備を導入している製袋部門を中心に、十勝平野のほぼ中心に広がる北の大地で、ダイナミックな事業が日々展開されている。

社会福祉法人更葉園(北海道河東郡)
社会福祉法人更葉園(北海道河東郡)

道内有数の設備を完備した製袋工場

 更葉園を代表する作業といえば、真っ先に挙げられるのが製袋工場だろう。自治体の指定ゴミ袋を製造しているのだが、その規模が想像以上に大きいことに驚かされる。一巻きが1,000m~1,500mで、1,300枚~2,800枚(アイテムのサイズによって変わる)の袋が作れるロールをセットする機械が、8台(ハイセッター4台、ロール3台、小型1台)も導入されているのだ。年間の契約数は多い市町村のアイテムで80万枚作成するものもあり、このロールの消費量は300本ほどになり、全ての市町村アイテムを合計すると何千本も次々にゴミ袋へと加工されていく。そのほとんどは自治体の入札で獲得する仕事であり、道内約20市町村の多くから受注している。一般企業と比較しても同等以上の機械設備を導入しているからこそ、生産力や価格面でも充分に対抗できるのだ。生産活動課課長の秋吉隆詞さんは、事業の詳細を次のように説明する。
「おかげさまで道内の約20市町村から仕事を受注できています。自治体の規模にもよりますが、多いところだと1回の受注量は80万枚程度の仕事になります。アイテムとしては『燃やせるゴミ』『燃やせないゴミ』『埋めるごみ』『生ゴミ』『あきびん専用』…等々、自治体によって呼び名が変わる指定ゴミ袋を、何種類も作って納めています」
 これだけの機械設備を有効活用すべく、他地域の5施設とタイアップしたゴミ袋の共同受注にも取り組んでいるそうだ。障害者優先調達推進法を積極的に展開している自治体においては、障がい者就労事業所であれば指定ゴミ袋製造の仕事を優先的に受注することが可能だ。たとえ大きな自治体から発注される大量ロットの仕事であっても、更葉園の製造能力ならばまったく問題ない。そこで現在、他地域の事業所と連携して、積極的に自治体へのアプローチを展開しているわけだ。

社会福祉法人更葉園(北海道河東郡)
社会福祉法人更葉園(北海道河東郡)

唯一無二の生産力を誇るタオル印刷が大人気

 印刷事業の特徴としては、タオルのオフセット印刷に取り組んでいるところだろう。オンデマンド印刷機による一般印刷にも取り組む事業所が、紙ではなくタオル生地への印刷に取り組むケースは非常に珍しい。しかもこの仕事は、近年ますます受注拡大を続けているというのだ。

「タオル印刷というと普通はシルクスクリーン印刷が主流なのですが、これだと1時間に刷れるのがせいぜい150枚程度。しかし私たちは、タオル用のオフセット印刷機を導入しています。シルクスクリーンだと1枚ずつ手で刷っていくスタイルですが、この機械はタオル12枚分をセットして刷り上げることが出来ます。1時間で500枚、1日稼働すると、平均生産数は約2,000枚/日。手作業のシルク印刷とは根本的に能力が違いますから、タオル印刷業界においては圧倒的な生産量と言っていいでしょう」と、生産活動課係長の澤山一憲さんは誇らしげだ。

 同じ機械を使ってタオル印刷を行っていた企業が数年前に廃業したこともあり、今や十勝管内のタオル印刷の仕事は、ほぼ独占状態となっているらしい。現在の年間生産量は、約20万枚。10年前が約7万枚だったというので、約3倍も生産量が増えたことになる。近隣企業との直接取引だけではなく、タオルを取り扱う代理店からの依頼も増えつつあり、北海道内で流通するタオルの多くが更葉園で印刷されている。

 その結果、タオルの印刷売上は、500〜600万円になる。仕事の多くはタオル会社や代理店からの「名入れ印刷工程」の発注のため、売上にタオル代は含まない。つまり純粋に印刷だけで、これだけの数値を残しているわけだ。年賀状印刷の500〜600万円と合わせ、印刷事業(総売上約3,000万円)の大きな屋台骨となっているのである。

社会福祉法人更葉園(北海道河東郡)
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十勝産大豆を使った、おとぷけ納豆と、枕再生事業

 3つ目の柱が、十勝産大豆を使って炊き上げた「おとぷけ納豆」の生産だ。商品名の由来について、常務理事の三浦昭博さんは次のように語る。

「おとぷけというのは、アイヌ語で音更町の地名を指しています。2008年にスタートした比較的新しい作業で、職員全員に新作業開発チームを組織して誕生しました。音更町は大豆の作付面積が日本一の地区ですから、地元の名物を使って美味しい納豆を作りたいと考えたのです」

 十勝産の良質な「とよまさり大豆」や北海道産の「ユキシズカ大豆」を使うなど、材料にもこだわった(小粒納豆に関しては、現在十勝産大豆だけでは足りなくなったため、道内全域から取り寄せている)。浸漬して水を含むことで粒が大きくなった大豆を利用者が手作業で、虫食いやつぶれのある豆などを外していく「豆より」の効果もあって、発売と同時にその味は大好評。2011年に実施された第16回全国納豆鑑評会では、北海道知事賞にも輝いた。大豆本来の美味しさに富み、「タレや醤油なしでも美味しく食べられる」と、消費者からの評価が高い。

「音更町内のホテル・旅館の朝食にも使っていただいているのですが、お客さんから問合せがあり、自宅まで発送させていただいたこともあります」と、三浦さん。特別なPRをしていないのに宿泊客から問合せがあるというのは、それだけおとぷけ納豆が美味しいという証だろう。納豆はおもに地元スーパー、道の駅、コープ等に卸している。とくにコープの企画販売(毎月1回)では、限定1,600パックと数量制限をするほどの人気ぶりだ。通常の定期販売でも、毎週200〜250個(3パックセット)の注文があり、売上の大半を占めている(納豆事業の年間売上高は、約1,000万円)。

 最近では、希少な大粒大豆「音更大袖振大豆(おとふけおおそでふりだいず)」を使った新商品も開発した。道の駅おとふけ限定商品という位置づけである。豆の味が強い高級大豆を、昔ながらの手盛りでパック詰めしていく。機械盛りよりも格段に美味しい納豆になり、「おとぷけ納豆」のブランドイメージをさらに高めたいという職員たちの思いが込められている。

 納豆とほぼ同等の売上高があるのが、4つ目の柱になるのが枕の再生事業だ。これは、病院や高齢者施設で使われていた古い枕を解体し、カバーをクリーニング、内部のビーズを詰め直して再度縫製するというリサイクル作業である。大手企業からの下請け作業であり、安定して約1,200万円の売上確保が見込まれる。さまざまな作業工程があるため、利用者の障がい種別や特性に合わせた仕事を提供しやすいというメリットもある。何よりも生活を支える枕を再生するという作業は、大きなやり甲斐になっているに違いない。

社会福祉法人更葉園(北海道河東郡)
社会福祉法人更葉園(北海道河東郡)

時代に合わせた事業の選択を

 最後に職員の皆さんに、今後の課題について伺ってみた。

「どの事業所でも同じだと思うのですが、やはり利用者の高齢化・重度化が喫緊の課題だと思います。とくに通所利用者やA型利用者については、主体となって働いてくれるような若い人たちを確保する必要があります。そのためにも特別支援学校との連携を強化したいと考えています」(三浦さん)

「利用者同様に、若手職員の確保も課題だと認識しています。4つの柱で展開している事業も、いつまでも同じことを続けるわけにはいきません。市場を見据えて、つねに新しいことにチャレンジする必要があるので、若い職員のチカラが不可欠なのです」(秋吉さん)

「一度一般就職したものの、思うようにいかなくて退職してしまい、自宅で困ってらっしゃる人たちも地域にはたくさんいるはずです。彼らがもう一度社会にチャレンジできるような新たな事業も立ち上げていきたいなと思っています」(澤山さん)

 更葉園のテーマソングの歌詞には、こんな一節がある。(更葉園WEBサイトにて視聴可能)

La la la ひとりにひとつずつ 夢をかなえてくれる花が
必ず咲く日が来る そのために今日があるから
La la la どこまでも広がってる この大地を歩いていこう
胸の鼓動感じながら 未来へとつづく道を
(作詞:石川優美/作曲・編曲:水上裕規)

 地域に住む障がいのある人たちの働くことへの挑戦という夢を叶えるためにも、更葉園の職員たちは未来に向かって、つねに進化した事業展開を今後も模索していくことだろう。

社会福祉法人更葉園(北海道河東郡)

(写真提供:社会福祉法人更葉園、文:戸原一男/Kプランニング

【社会福祉法人更葉園】
https://www.kouyouen-selp.jp

※この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時(2024年03月15日)のものです。予めご了承ください。