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社会福祉法人西宮市社会福祉事業団(兵庫県西宮市)

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社会福祉法人西宮市社会福祉事業団(兵庫県西宮市)

西宮市社会福祉事業団の概要

 西宮市社会福祉事業団は、児童福祉、障がい福祉、高齢者福祉と多岐にわたる福祉サービス事業所を運営する社会福祉法人である。その事業所数は合計で38カ所にも及び、複雑かつ多様化する地域の福祉ニーズに対応すべく、1988年に設立された。

 法人内で唯一の障がい者就労系事業所である名神あけぼの園(就労移行支援事業、就労継続支援B型事業、生活介護事業)の歴史はさらに古く、1962年に開所した西宮市立身体障害者通所授産施設だという。1997年に西宮市より運営委託され、2014年より指定管理者制度から自主事業に変更となった。

 大きな特色は、「障がい福祉から高齢福祉までを(法人として)トータルサポート」「昭和から令和に至る長い歴史」「多くの利用者(定員100名)が働けるゆったりスペース(建物総面積2,654㎡)」「最寄り駅から徒歩圏内という立地条件」だろう。多数の高齢者事業所を運営するノウハウを活かし、外部講師を招いたエアロビクス教室を毎月開催するなど、健康面もバックアップ。余暇活動のバスツアー等と共に、利用者たちの心と身体をリフレッシュすることにも気を使っている。

社会福祉法人西宮市社会福祉事業団(兵庫県西宮市)
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伝統的なクリーニング事業

 それでは、名神あけぼの園の仕事内容について見ていこう。代表的なのが、クリーニング作業である。法人では複数の高齢者デイサービス事業所、介護老人保健施設を運営しているため、入浴時に使う「バスタオル・フェイスタオル・おしぼり」のセットをレンタル提供する事業スタイル(一種のリネンサプライ)を構築している。

「タオルを施設から回収し、洗濯、乾燥、たたみ…というのが、主な作業の流れです。全国にはクリーニング事業に専門的に取り組む障がい者の事業所も多数ありますが、他と比較してそれほど大がかりに取り組んでいるわけではありません。でもタオル以外にも、保育所や保健所の職員さんが着ている白衣や、酒造メーカーの職人さんが現場で着用する防寒着の洗濯なども請け負っています。まるで豪雪地帯に住む人たちが着るような分厚い防寒着です。あくまで白物衣類専門になりますが、幅広く対応させていただいています」と、園長の米満 崇さんは説明する。

 クリーニングは創設時から続いている伝統的な作業であり、年間売上高の1/2(約800万円)を占め、名神あけぼの園の事業の屋台骨を支えている。しかし昨今の光熱費(とくにガス代)の度重なる値上げが、事業に大きな打撃を与えているのも事実である。洗剤等の消耗品価格も大幅に上昇しているため、著しく収益率は下がっているのが大きな課題となっているそうだ。

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作業量は安定供給される紙箱作業

 もう一つの柱が、箱折り作業である。菓子メーカーの箱印刷を手がける業者からの依頼で、百貨店に並ぶような菓子の箱折りを任されている。種類も20種類以上あり、繁忙期になると5,000個以上出荷する日もあるという。箱折りに関してはここ数年仕事が途切れることはない状態で、安定的に受注量が確保できている。

「緊急事態宣言が発令され、百貨店が閉鎖になったコロナのピーク時はさすがに仕事が減りましたが、現在はほとんど回復してきました。ウチの事業所には広大なスペースがあるため、箱折りの仕事にはうってつけなのです。材料を置くスペースや、折った箱を並べておく場所には苦労しませんから。業者の方にも、とても重宝してもらっているようです」と、米満園長は笑う。

 ここで折られている菓子箱は、地元の人なら誰もが知っているメーカーのものばかりである。百貨店に行けば、「自分たちがいつも折っている箱」に入ったお菓子が並ぶ姿を見ることができる。それを誇らしげに買ってくる利用者もいるし、新聞で新商品の広告が掲載されたりすると、「この箱折りの仕事も入ってくるかなあ?」などと職場で盛り上がるという。このように完成品が見えることは、彼らにとって何よりも仕事のやり甲斐につながっているのだろう。

 この他にも紙箱作業班では、時間の合間を見て市内のB型事業所(他法人)から依頼される軽作業(100円ショップ製品の袋詰め等)にも対応する。西宮市地域自立支援協議会のしごと部会に加盟する事業所間の関係づくりが、作業の受注拡大につながっているのである。

社会福祉法人西宮市社会福祉事業団(兵庫県西宮市)
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新しいスタイルの生活介護事業にも力を注ぎたい

 名神あけぼの園の現在の月額平均工賃は、約12,000円(2022年実績)である。コロナ前には15,000円を超えていた数値は残念ながら下がり続けているのが現状で、その対策が喫緊の課題だ。今後の対応について、大路修策係長は次のように語る。

「光熱費の値上げは、しばらく続くことが予測されます。少しでも出費を抑えるために電気の契約先を切り替えたり、照明をLEDに切り替えるなどの努力をしていますが、限界もありますね。そのためにも新たな仕事先の確保が大切になってきます。

 もう一つの検討材料は、利用者の定員数(100名)だという。この規模感はもちろん名神あけぼの園の大きな特色ではあるのだが、時代のニーズに即した体制なのかについては再検討すべき時期に入っていると、米満園長は言う。

「高齢化や家庭事情も重なって、以前のように働けなくなったと退所を希望される人たちも増え、定員割れが続いています。そんな状況に対応するため、2023年4月から新たに生活介護事業(定員20名)をスタートさせました。ここで目指しているのは、B型事業所に通う利用者さんの高齢化ニーズに応えるための『リハビリ重視型の生活介護事業』です。いくつもの高齢者事業を運営している法人のノウハウを活用すれば、まったく新しいスタイルの事業所を運営できると思うのです」

 具体的には、リハビリや就労の継続に重きを置いた事業内容なのだという。午前中には身体機能の維持向上を狙ったリハビリに集中してもらい、午後は慣れ親しんだ仕事に関わってもらう。この「働く生活介護」というスタイルが定着すれば、今まで以上に長いスパンで事業所を利用していただける方が増えていくのではないかという発想である。

 法人内の他事業所から異動し、コロナ禍になってから園長に就任するという苦難の時期に直面してきた米満園長だが、これまでの伝統を覆すような大胆な発想で、着実に改革を進めているところだ。仕事の確保(工賃向上)だけでなく、利用者の健康確保という大きな課題にも果敢に挑戦する名神あけぼの園の今後に、エールを送りたい。

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(写真提供:名神あけぼの園、文:戸原一男/Kプランニング

【社会福祉法人西宮市社会福祉事業団】
https://www.nishinomiya-fukushi.jp

※この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時(2023年08月21日)のものです。予めご了承ください。