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NPO法人就労ネットうじ(京都府宇治市)

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就労ネットうじの概要

 就労ネットうじは、ゆめハウス(就労継続支援A型事業・就労継続支援B型事業)、みっくすはあつ(就労継続支援B型事業)を運営するNPO法人である。法人の原点となるのは、1999年に障がいのある子どもを持つ親が資金を出し合って始めた無認可共同作業所ふれあいルーム ゆめハウスだった。その後、コーヒーハウスぱれっと(2000年)、宇治市障害者福祉施設連絡協議会が運営するうじ・はんどめいどショップ(2005年)と次々に市内に作業所が立ち上がり、2006年には3つの組織が合体してNPO法人ネットうじが設立されたのである。

 障害者自立支援法(障害者総合支援法)に伴う新体系となってから、それぞれの作業所・店舗・喫茶店等が統廃合・移転・組織変更を何度も繰り返した後、2017年に現在の形に落ち着いた。

 法人理念は、「ともにある〜私たちから発信〜」である。ひとつひとつの出会いをかけがえないものに、ひとりひとりの人生を人間らしく心豊かなものにするために、「支えあって・つながりあって・響きあっていく」ことを大切にする。就労ネットという言葉が表しているように、目指しているのは、障害のある人たちが地域の中でさまざまな仕事に関われるようにサポートすることだ。今回は就労ネットうじの中でも、A型とB型の事業展開を通じて地域との連携を深めている「ゆめハウス」の活動について見ていこう。

清掃事業に特化するA型と、B型で取り組むさまざまな作業

 ゆめハウスのA型作業は、清掃である。公共施設・マンションの共用部・児童公園・個人宅等、さまざまな顧客と契約を結び、通常清掃・ポリッシャー清掃・ワックス作業・除草作業等を行う。その数は約30カ所もあり、月曜日から土曜日まで毎日2チームに分かれてスケジュールを調整する。時間は10時〜16時が基本だが、学校プールなどの特別定期清掃になると、日曜日に出勤することもある。産業振興センター、塔の島(宇治公園内)、小倉明星園(デイサービス)等は毎日であり、1週間に1度、寺院やマンション等の清掃を行う上、不定期での依頼もある。これらの業務についてはB型利用者の実習の場としても活用しながら、運営を行っている。管理者の小畑治さんは、次のように語る。

 「寺院や駅前の雑草取りなどの清掃作業は、B型の利用者さんでも十分対応できますし、この仕事を担当してもらえば、工賃単価も上がります(時給240円→350円)。ステップアップをめざす利用者さんにとっては、格好の実習先となっています」

 清掃に特化したA型と違い、B型の作業はバラエティに富んでいる。これはやはり「1人ひとりの多様な生活に寄り添い、多様な働き方が実現する仕組みづくりに取り組む」というゆめハウスの基本方針によるものだろう。具体的には、クッキーやパウンドケーキ等の製菓作業、清掃(除草)作業、ものづくり作業(さをり織りコースター・い草コースター・刺し子ふきん)、出店販売(お祭り・イベント)、出前カフェ(福祉施設・公共施設)、カフェ事業(ゆめカフェ・かむcomeカフェ)、自販機を活用した焼き芋販売、地域企業・団体への施設外就労、エコボールなど、多様な内容だ。

アイデアを駆使して、地域連携の中から仕事を生み出す

 ゆめハウスが優れているのは、こうしたさまざまな仕事を地域連携の中から次々に生み出し、販売へとつなげている点だろう。代表的な例が、コーヒーや焼き菓子の委託販売である。宇治市役所内の各課(25部署)に協力を依頼し、可能な部署にコーヒーサーバー(保温ポット)と焼き菓子を置かせてもらっている。コーヒーはセルフサービスとなっており、一杯150円。代金は専用の貯金箱にいれてもらう形式で、横にはお菓子も置いてあるのでセットで購入してくれるお客さんが多い。

 「単価が安いので売上そのものは微々たるものですが、ちりも積もれば山となります。何より、コーヒーを詰め替えるために利用者と一緒に毎日各部署を訪れ、担当者たちと会話が生まれます。こうした地道な積み重ねが、将来の仕事確保につながっていくのです」と、小畑さん。市役所内にはこの他、ホットサンドとドリンクを主体とした「かむcomeカフェ」という喫茶コーナーを8階に出店している。

 出張カフェサービスという仕事もある。近隣にある障がい者入所施設を利用者たちが定期的に訪問し(月1〜2回)、焼き菓子とドリンク(コーヒーや紅茶等)のセットをお客さんに提供していくのである。公共施設での会議に、コーヒーセットの注文を受けることもあるし、事業所内では「ゆめカフェ」という地域住民向けカフェも週1回(毎週金曜日)行っている。こうした取り組みから、「仕事を通じて利用者たちの存在を地域の人たちに広めていきたい」という小畑さんの熱い思いが感じられる。

 さをり織りコースターやい草コースターも、地域連携の賜だ。さをり織りには、地元の障子屋さんから和紙(貼り替え後の不要になった和紙)を提供してもらい、それを染めて裂き織りの糸にし、さをり織りの横糸に使うのである。すると独特の味が表現された生地が生まれ、コースターに加工すると企業・団体からの注文が殺到した。福祉施設販売店「ハートプラザKYOTOぶらり嵐山」でも、海外からの観光客に大人気なのだという。和紙のコースターだけでも年間3,000枚も売れる大ヒット商品となっている。「い草コースターもよく売れますね。これも近隣の畳屋さんから畳の端材を提供してもらって、製品に蘇らせたものなんです」と、小畑さん。

 アイデア満載のこうした取り組みの結果、ゆめハウスの月額平均工賃は、A型が約11万円、B型が35,500円(令和6年実績)という高い数値を実現するようになっている。

さらなる広がりを目指した活動も実施

 もう一つ、小畑さんが力を入れる活動の1つに、「エコボール」がある。地元の高校野球チーム等と連携し、激しい練習で痛んだ硬式ボールの修繕を1個100円で請け負うという活動だ。今や全国に広がるこのプロジェクトの発端は、小畑さんと元プロ野球選手(横浜ベイスターズ)の大門和彦さんとの約17年前の出会いなのだという。

 高校野球の練習にはたくさんの硬式野球ボールが使われるが、激しい練習で痛んだものは廃棄されるケースがほとんど。母校(宇治東高校)で山のように積み上げられたボールを目にした大門さんは、小畑さんと協力して「障がい者の新たな仕事にできないか」と、プロジェクトをスタートさせたのだった。

 当初はたった20個程度のボールからスタートした取り組みだったが、修繕・再利用の仕組みがリサイクルを大切にする時代のニーズともマッチして、年々仲間が拡大しつつある。現在は約36の施設が参加し、緩やかな全国ネットワーク組織を立ち上げている。仕事を提供してくれるのは、約416チーム。日本プロ野球OBクラブもオフィシャルサポーターとしてバックアップしてくれるプロジェクトになった。

 「仕事をお願いしたいという問い合わせは、たくさんあります。ただ私たちは地元チームと地元で働く障がい者を結びつけるという基本を大切にしているので、活動の目的をご理解いただけない場合はお断りすることになります」と、小畑さん。仕事をやってみたいという障がい者事業所からの依頼も多いらしいが、まずは直接顔をつきあわせて打ち合わせすることが前提だ。というのも、「エコボールの活動は、あくまで地域との結びつきを強めるためのきっかけにすぎない」というのが基本スタンスだからだ。目先の利益を追うのではなく、活動を通じて生まれる気づきや新たなつながり、そして仕事づくりを大切にしながら、障がい者理解を広げる活動に共に取り組む仲間を全国に求めている。

 ゆめハウスが福祉講演会・学習会やさをり織り体験を、定期的に開催しているのも、地域への啓発活動の一環だ。2016年には法人成立10周年記念として、絵本「トビウオくん、わかんない」を制作した。誰もが居て良い社会、多様性を認め合える社会を実現するために、お互いを「知る」ツールとして絵本が最適だと考えたのだ。地元生協の助成金を活用し、3,000部印刷。地域の小学校での道徳教材にしたり、読み聞かせイベント等での配布も行っている。

 障がいのある人たちが働く場を作りながら、地域の人たちとのつながりを大切にし、「支えあって、つながりあって、響きあっていく」──ゆめハウスが目指しているのは、地域共生社会づくりそのものだ。宇治市内だけでなく、全国の仲間たちとも協力関係を広げる大きな構想に、ぜひとも注目していきたい。

(写真提供:NPO法人就労ネットうじ、文:戸原一男/Kプランニング

【NPO法人就労ネットうじ】
https://sn-uji.or.jp
【エコボール】
https://ecoball.jp

▲絵本「トビウオくん わかんない」。サカナたちから「羽が生えているなんてヘンなヤツ」と仲間はずれにされたトビウオくんが、陸の動物たちとの出会いを通じて「みんな違って、みんな良い」ことを理解できる内容となっている。

※この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時(2026年03月01日)のものです。予めご了承ください。