Reportage
SELP訪問ルポ
社会福祉法人徳充(とくじゅう)会(石川県七尾市)
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徳充会の概要
徳充会は、青山彩光苑 ワークセンター田鶴浜(就労継続支援B型事業)、同リハビリテーションセンター(機能訓練・就労支援事業)、同ライフサポートセンター(生活介護事業・施設入所事業・短期入所事業)、同穴水ライフサポートセンター(生活介護事業・施設入所事業・短期入所事業)、さいこうえんの障害者生活支援センター(地域活動センターⅠ型・相談支援事業)、さいこうえん障害者就業・生活支援センター、石川県精生園(生活介護事業・入所支援事業・短期入所事業)、自立ホームけいじゅ(グループホーム・居宅介護事業・指定相談支援事業)、相談支援キララ(指定相談支援事業)、バリアフリーホーム セェレーナ青山(福祉ホーム)等の障がい者支援事業を展開する社会福祉法人である。
この他にも、エレガンテなぎの浦(特別養護老人ホーム・デイサービス)、アンジェリィなぎの浦(軽費老人ホーム)、もみの木苑(デイサービス)、ローレルハイツ恵寿(高齢者複合施設:サービス付き高齢者住宅・特定ケアハウス・一般ケアハウス・ヘルパーステーション)等の高齢者支援事業にも取り組んでいる。
法人の原点となるのは、1985年に設立された重度身体障害者更生援護施設「青山彩光苑」であった。その後も、障がいのある人たちが社会復帰するための各種リハビリ施設を続々と開所し、1997年に就労支援のための「青山彩光苑 ワークセンター田鶴浜」が設立されることになった。法人設立から約40年を迎え、現在では20カ所の事業所を有する大きな組織になったが、「誰もがいきいきと暮らせる社会」をめざす法人理念は変わらない。社会医療法人董仙会(とうせんかい)と共に、医療・介護・福祉を統合した地域包括ヘルスケア(けいじゅヘルスケアシステム)を推進してきたのである。
ワークセンター田鶴浜の事業
それでは、徳充会唯一の障がい者就労支援事業所である青山彩光苑 ワークセンター田鶴浜(以下、ワークセンター)について詳しく見ていこう。作業内容は、花苗の手入れ・ミニトマト栽培・土作り、クリーニング、箱折りや電子部品組み立て等の軽作業、リサイクル事業(ペットボトルや空き缶回収)となっている。センター長の細木俊逸さんは、事業所設立の経緯を次のように語る。
「ワークセンターの隣には、七尾市が運営するリサイクルセンターがあります。この焼却熱を使って、田鶴浜温室組合がガラス温室10棟を建てて水耕栽培をしていたのですが、組合が解散することになり、設備を障がい者の働く場に提供(無償貸与)したいという打診が舞い込みました。法人としても就労事業所の成立を模索していたこともあり、野菜づくりを行うワークセンターを開所することになったのです。当時はビニールハウスをフル活用し、トマト・キュウリ・ナス・スイカ・プリンスメロン・ピーマン・パプリカ・赤ネギ・フルーツトマト、葉ネギ、みず菜などの野菜、ビオラ、マリーゴールド・サルビア・日日草、葉牡丹などの花を栽培していました。大手スーパー・飲食店・旅館などに出荷されるなど、大規模な農業を展開していたと聞いています」
もう一つの柱が、クリーニング事業である。法人内には7カ所の高齢者入居施設があるため、入居者の衣類やバスタオルなどの洗濯を一手に引き受けている。さらに各施設で使うオムツの手配も、ワークセンターの役割だという。洗濯物やオムツ類──これらの管理だけでも膨大なスペースが必要なため、配送センターを独自に設け(従たる事業所)、洗濯物のたたみスペースやオムツの保管倉庫としている。
能登半島大震災によって受けた甚大な被害
2024年1月1日に発生した能登半島大震災によって、ワークセンターの事業は大きな打撃を受けた。本体である建物には大きな影響はなかったものの、敷地内の地面にはあちこちヒビが入っている。倒れて建物に寄りかかっている電線も何本かあった。何よりも大きかったのが、ハウス内の地下に敷き詰めている水パイプが破損してしまったことだろう。温室ガラスの多くも割れて点在しており、施設開所後に職員がまずやらなければならないのがさまざまな設備の補修だった。
「地域では多くの家が半壊・全壊状態で、水道業者や大工さんもてんやわんや。修理を申し込んでも数ヶ月待ちの状態ですし、費用も通常の3倍くらいかかります。水耕栽培はワークセンターの歴史を作ってきた大切な仕事ではありますが、残念ながら継続を断念しました。今は仮補修の状態でも栽培できる葉葱や水菜などの野菜だけを、細々と栽培しています」と、細木さん。
クリーニング事業にも、影響はあった。能登半島にあったデイサービスセンター「ふれあいの里」と「エレガンテたつるは」は建物全壊のため、やむなく事業廃止となったのだ。これによる売上減は、年額約100万円だという。
逆に、売上が伸びた事業もある。ペットボトル等を回収するリサイクル事業だ。仮設住宅では、避難者のために飲料水が配られる。その空き缶・ペットボトル回収がワークセンターに任されたため、大量の資材が集まって来たのである。ワークセンターではこれらを細かく分別・洗浄し、ブロック状に圧縮して回収業者に引き取ってもらっている。倒壊した家にあった家具が持ち込まれるケースも非常に増えたという。
大きな震災を経て得た「大きな教訓」
設備の破損などいくつかの打撃を被ったものの、ワークセンターの事業そのものを揺るがすような事態にならなかったのが不幸中の幸いだと細木さんは安堵する。
「震災直後は、バタバタでした。断水していたため、利用者さんの受け入れができたのは1ヶ月後の2月8日からなんです。それまでの間、職員は利用者さんの安否確認や、洗濯物のたたみ作業に追われました。断水していたので、洗濯は被害が少なかった地区の業者に依頼し、たたみと分別発送だけを職員が担当したのです。自宅が半壊して、避難所で暮らす職員さんもたくさんいました。2月8日から、利用者さんの受け入れを再開しましたが、午前中のみ。完全に再開したのは、3月下旬になってからですね」
思いもよらぬ震災被害の中、功を奏したのが500リットル用の水タンクを事業所内に設置してあったことだという。和倉温泉の花壇整備の仕事を引き受けていたため必要だったのだが、断水時にはトイレ用水としてとても重宝した。「もしタンクがなかったら、事業所の再開がさらに遅くなったのは間違いないでしょう」と細木さん。発電機の準備も含め、災害用備品の準備は怠らない方がいいことを痛感したという。
「もう一つ大事なのは、ガソリンです。たまたま私たちは、年末に配送車のガソリンをすべて満タンにしておいたので、救われました。災害時には、ガソリンスタンドは大行列になります。面倒がらずに、ガソリンは常に満タンにしておくくらいの心構えが必要でしょう」
震災から約2年が経ち、少しずつ日常に落ち着きを見せ始めたワークセンターではあるが、これまでハウスで働いていた利用者たちを、公園清掃などの慣れない仕事に配置転換するなどの課題は残っている。大きな被害を受けた今でも、ワークセンターの月額平均工賃は約34,000円以上を維持。この数値を守っていくためにも、復興後に打診が増えているという環境整備等の新たな作業を積極的に採り入れ、さらなる発展につなげていく計画である。
(文、写真:戸原一男/Kプランニング)
【社会福祉法人徳充会】
http://www.tokujyu.jp
※この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時(2026年01月05日)のものです。予めご了承ください。







