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社会福祉法人四恩会(石川県羽咋郡宝達志水町)

公開日:

四恩会の概要

 四恩会は、今浜苑(就労継続支援B型事業・生活介護事業・施設入所事業)、キッチンクラブおしみず(就労継続支援B型事業)、ライフクリエートかほく(就労継続支援B型事業・生活介護事業)、インクルしか(生活介護事業)、あらいぶ・みらい塾(就労移行支援事業・生活介護事業)、チェンジA.(障害児通所支援事業)、ふれんど、学び舎あい(グループホーム)等を運営する社会福祉法人である。

 能登地域から金沢市周辺まで幅広く拠点を展開し、地域ごとのニーズに合わせたさまざまな事業を1989年から展開してきた。そのなかでも今回はキッチンクラブおしみずと今浜苑の詳細について、現地に直接伺って事業の概要と能登半島地震(2024年1月1日)後の復興状況も含め、担当者から詳しいお話を伺った。

▲キッチンクラブおしみず
▲今浜苑

弁当・パン・焼き菓子の宅配事業を行う「キッチンクラブおしみず」

 まずは、キッチンクラブおしみずである。メインとなる作業は、弁当・パン・焼き菓子の製造で、宅配を中心とする販売方法を採用しているのが特色だ。管理者の村井清美さんは、次のように説明する。

「弁当は1日平均230〜240食。毎日メニューが変わる日替わり弁当を作っています。お客さまは地域の一般家庭が中心で、役場や企業にも配達します。ご高齢の方が多いので刻み食・おかゆ食に対応し、生活習慣病などをお持ちの方には専用メニューを提供します」

 厨房は朝8時15分に動き出し(利用者は9時〜)。すべて手作りにこだわるため、配達車が出発する10時までに調理と仕分けを完了させている。具材の下処理を前日午後に終えることで短時間でも大量生産を可能にしている。

 配達頻度は、毎日の方から週2〜3回の方までさまざま。献立表を前月に配布しており、メニューを見てキャンセル連絡が入る日もある。献立を見ると、豚肉の野菜巻き、カレイの五目あん、アジのマリネなど手の込んだ料理が多く、米はもちろん能登産だ。

 パンは約30種類。菓子パン、惣菜パンに加え、ふわふわ食感のホテルブレッドが大人気。午後はパン・焼き菓子の配達に配送車を活用し、効率的な宅配体制で年間約3,000万円(弁当2,000万円、パン・菓子1,000万円)の売上を確保している。利用者の平均工賃は月額20,105円(2024年度実績)である。

高齢化にも対応しながら事業を進めている「今浜苑」

 これに対し、利用者の高齢化に伴い、事業を少しずつ転換しているのが今浜苑である。法人内ではもっとも歴史ある事業所であり、利用者の高齢化・重度化が進行している。1990年に50人定員の知的障害者入所授産施設(当時)として設立されたのだが、新体系の際に20人(B型事業)+30人(生活介護事業)へと分けられ、2022年にはB型事業の定員は10名に縮小した。

 作業としては、農園班による椎茸・キクラゲ・ネギの栽培と食品加工班による乾燥しいたけ商品、椎茸の佃煮、焼きかき餅、パイなどの製造である。現在取り扱っている椎茸菌床数は、約1,800玉。10月〜1月にかけて200玉ずつ菌床を増やしていき、半年間にわたって毎日椎茸を収穫していく。収穫量は、椎茸が約1,000kg。キクラゲは約232 kgだという。

 本来は生のまま出荷する方が利益率は良いらしいが、選別する人手も技術も必要になる。そのため最近は、選別が比較的不要な乾燥品に注力している。とくに1/4カットの椎茸を乾燥させた、三角カット椎茸パックが、人気商品だ。水に戻した後すぐ料理に使えるという手軽さが、時代のニーズにマッチしたのだろう。

「金沢にある有名なお豆腐屋さんからは、ガンモに入れる乾燥キクラゲを定期的に注文いただいています。地元で栽培された安全な食材だということが、とても評価されたのです。能登半島大震災の後、『被災してキノコの生産ができていないのかもしれない』とお気遣いをいただき、注文が途切れてしまうことがありました。かえって気を使わせてしまって、申し訳なかったです(笑)」と、サービス管理責任者の佐野智子さんは反省する。

 震災後は、ふるさと納税の返礼品としても乾燥キクラゲが採用されることになり、売上を大きく伸ばしている。古代米を使用し、1枚ずつオーブントースターで利用者が手焼きした「かきもち」も、人気の商品である。製造するのに手間暇がかかりすぎて、道の駅などに納品後すぐ売り切れても、補充に時間を要してしまうのが悩みの種だという。

震災を経て、あらためて感じたこと

 今回の取材を行ったのは、能登半島大震災から約2年が経った時期である。今浜苑、キッチンクラブおしみずともに、石川県の中でも中部から南部(金沢市寄り)に位置する立地のため、建物への被害等はそれほど受けなかったのが幸いだった。とくにキッチンクラブおしみずでは、前年に擁壁工事を行っておいたことが功を奏したのだと村井さんは言う。

「あまり地盤が良くないところに建っていたので、万一に備え、思い切って1,300万円のお金を投じて敷地全体の擁壁工事を行っていたのです。もしこれをやってなかったら、地面がずれ落ち、建物も全壊していたかもしれません。いざというときの準備をしておくこことの必要性を痛感しました」

 弁当の宅配事業は、1月8日より再開した。配達地域にはまだ断水状態の家も多かったため、弁当の宅配は多くのお客さんが待ちわびていた。当時の道路は亀裂やマンホールの隆起などで、ひどい状況だった。通行禁止になった道も多く、配達には通常よりも倍以上の時間がかかったが、「お風呂にも入れない人たちに、せめて暖かい弁当を届けたいという一心でした。震災を経て、これまで続けてきた宅配事業の大切さをあらためて痛感しました」と、村井さんは語っている。

 今浜苑施設長(法人業務執行理事・事務局長)の山黒修さんも、思いは同じだ。だからこそ、昨年夏に開催した今浜祭りにおいて、能登半島で被害の大きかった4つの障がい者事業所の商品販売会を実施した。被災地の写真パネルを展示しながら、地域の人たちに応援団を増やそうという試みである。自分たちの地区は大きな被害に遭わずにすんだが、能登半島では建物そのものが全壊するなどの被害にあった障がい者事業所も多い。1日でも早く復興してほしいという思いが、こうした支援活動へとつながっているのだ。

 まだまだ復興半ばでありながら、地域のために支援活動を続ける今浜苑やキッチンクラブおしみずの取り組みに、今後も注目していきたいと思う。

(文・写真、戸原一男/Kプランニング

【社会福祉法人四恩会】
http://shionkai.or.jp/

※この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時(2026年04月01日)のものです。予めご了承ください。