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社会福祉法人清風会(広島県安芸高田市)

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清風会の概要

清風会は、就労継続支援A型事業の「清風会吉田工場、清風会みつや工場、清風会サンライフ、清風会海田工場(B型との多機能型)、清風会みやじま」及び、就労継続支援B型事業の「清風会ワークセンター(施設入所含む)、清風会サンブリエ(施設入所含む)、清風会サンホーム、清風会ニューワーク、清風会みやび、清風会つばさ(移行型含む)」等の障がい者就労支援事業を展開する社会福祉法人である。

この他、清風会吉田清風荘(生活介護事業・施設入所支援事業)、清風会サンサンホーム(生活介護事業・施設入所支援事業)、清風会ほのか(生活介護事業・施設入所支援事業)や、福祉ホーム(1棟:定員25名)、地域移行型ホーム(4棟:定員各20名)、グループホーム(17棟:定員計118名)等の生活支援施設及び居住施設、清風会つぼみ(相談支援事業)、ケアサポートセンター椿(居宅介護支援事業)、清風会さくら(ショートステイ)、清風会もみじ(デイサービス)、清風会さわさき(デイサービス)など幅広い事業を展開している。

さらに定年を迎えた利用者の方々に安住の場として清風会さくら(特別養護老人ホーム)、職員の子どもや地域で働いておられる社員のお子さんを預かる施設として清風会そらはる保育園(企業主導型保育事業)を整備するなど、法人で働く人の全員の「安心・安全・信頼」を基本方針とした各種事業が行われている。今後は地域医療を踏まえた診療所等も検討している。

吉田工場から全ては始まった

清風会の始まりは、1972年に設立された身体障害者福祉工場(当時)の吉田工場である。福祉工場の制度が日本でスタートすると同時に開所した3工場(静岡・大分・広島)のうちの一つであり、非常に古い歴史をもつ。作業としては、設立時からクリーニングに特化していた。吉田工場が設立された理由について、吉田工場所長は次のように説明する。

「当法人の澤崎卓児会長は、もともと株式会社ホワイト舎や、株式会社広島リネンサプライというクリーニング会社を経営していました。たまたま身体に障害のある夫婦が勤務していたことがきっかけとなり、福祉工場の経営を任される話があり、また、安芸高田市にある総合病院から相談され、社会復帰のためのリハビリの場所として精神科患者さんをクリーニング工場で受け入れていたのです。そんな折り、1971年に日本でも新たに身体障害者福祉工場の制度が出来ることとなり、クリーニング事業で障がいのある方々の自立のお手伝いをしたいと考え、吉田工場を立ち上げました」

その後、福祉工場の制度は知的障がい者、精神障がい者へと広がっていき、そのたびに清風会ではみつや工場、サンライフといった障がい種別の福祉工場を作っていった。新体系移行後はこれらが3障がいを統合した就労継続支援A型事業所となり、現在では海田工場、福山工場、みやじまも含めて6つのA型事業所(合計定員は197名)を運営する法人となったのである。そのすべての事業所において、クリーニング事業を行っている。

事業規模は、一般的な障がい者就労支援事業所としての想像をはるかに超える。法人全体のクリーニング事業の売上は、約13億円。吉田工場の利用者の月額平均工賃(給与)は、187,330円(令和2年度実績:賞与含む)であり、トップレベルの人だと241,469円になる。最低賃金保障、各種保険加入(厚生年金、社会保険、雇用保険、労働保険等)、中退共制度加入、各種手当・福利厚生ありと、一般企業とほぼ遜色ない待遇を障がいのある人たちに提供しているのだ。

病院や高齢者施設のリネンサプライ事業が中心

吉田工場のクリーニング現場には、1回に50〜60kg洗濯することができる「大型連続洗濯機」が設置されている。洗える槽が8〜12槽もあるため、処理能力は1日6,000〜8,000kgにもなるという。洗濯機で脱水されたシーツやテーブルクロス、浴衣は「大型乾燥機」(100kg)で完全乾燥させ、リネン品の仕上げには大型ロールアイロナー(シーツ9,000枚仕上機)も設置されている。これ以外にも、破れや汚れを自動的に検出してきれいなものだけをたたんでいく「品質検査装置」等もあり、設備の充実ぶりには圧倒されてしまう。吉田工場の取引先の中心は県内の病院や高齢者福祉施設などであり、シーツ・包布、枕カバー・布団・白衣・浴衣、布団寝具などをレンタル&クリーニングするリネンサプライ事業である。

「今でこそこれだけ大量の仕事に恵まれるようになりましたが、開設当初は下請け事業が多く簡単なシーツ類の仕上げでした。事業が大きく伸びたきっかけとなったのは、山陽新幹線が博多まで伸びた1975年です。広島駅発着の新幹線のヘッドレストカバーのクリーニングを受注できることになり、工場に現在のような大型の機械を導入し、それから売上が大きく伸びることになったのです」と、吉田工場所長。

クリーニング類の集配業務は、法人全体の集配グループが一括して行っている。全部で大型トラックを含む40台の車両を保有しており、県内にある何百カ所の取引先と6つの洗濯拠点(工場、事業所)を回っていくのだ。こうした運営スタイルは、まさに大手クリーニング会社そのものである。澤崎会長が経営する企業のノウハウが、吉田工場を初めとするA型事業所の運営にも大きく活かされているのだ。

アフターコロナを見つめた営業対策

2020年から始まり、約2年以上続くコロナ禍は、清風会のクリーニング事業にも大きな打撃を与えている。広島県内の観光ホテルの稼働率は30%程度に下がってしまったため、ホテルのリネンサプライを中心としてきた事業所も非常に苦しい経営状況にあるのだと、吉田工場長は言う。

「幸いなことに吉田工場は病院や高齢者施設が中心ですから、むしろ売上そのものは安定しています。新幹線の利用率も下がったのですが、便数は減らなかったのでヘッドレストカバークリーニングの発注量も以前のまま。とはいっても、取引先の中には新型コロナ専門病棟のある病院や入院できない軽症患者を受け入れる宿泊ホテルなどもありますから、その対応にはとても神経を使います。新型コロナ専用のトラックで防護服を着けた職員が受配送し、なんとかトラブルもなく事業を継続できています」

今後の展開としては、アフターコロナを見据えた新たな事業展開を構想中なのだそうだ。コロナ禍は経済に大きな打撃を及ぼしたが、社会的に感染症に対する危機感を広げてくれたのも事実であり、そこに事業者としての光明を見いだしている。新規に新型コロナ対策としての感染予防対策を施したクリーニングを行うことで、単価は高くなるものの、今後はこのような付加価値ある新商品が求められる時代になると、吉田工場長は考えている。

「もう一つ期待しているのが、公衆衛生に対する考え方が変わってくれることです。病院等のシーツや布団・枕カバーは毎日交換するのが衛生的に良いと思いますが、実態は1週間に1回以上程度の交換。個人の家になると、もっと少ないですよね? これから私たちの衛生感覚も変わっていくと思うのです。そうすれば、クリーニング事業にもまだまだ伸びしろはある思います。開設して約50年が経つため、吉田工場の建物は老朽化が進んできましたが、障がいのある人たちがこれからも安心して働ける労働環境づくりにも力を注いでいきたいですね」

「あなたの暮らしを支援します」という謙虚なスタンスで事業を展開する清風会──これからも日本の障がい者就労支援事業の最先端を走り続けるトップリーダーとして、ますますの発展が期待される。

(写真提供:社会福祉法人清風会、文:戸原一男/Kプランニング

社会福祉法人清風会(広島県安芸高田市)
http://www.seifu-kai.org

※この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時(2022年03月01日)のものです。予めご了承ください。