Reportage
SELP訪問ルポ
社会福祉法人みなと福祉会(愛知県名古屋市)
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みなと福祉会の概要
みなと福祉会は、イルカ作業所(生活介護事業)、しおかぜ作業所(就労継続支援B型事業・生活介護事業)、うろじの家(生活介護事業)、わーくす昭和橋(就労継続支援B型事業・生活介護事業)、さざなみ(児童発達支援・放課後等デイサービス)、あしたの家(共同生活援助事業・相談支援事業)、ネットワークみなと(居宅介護支援事業)等の障がい者支援事業を行う社会福祉法人である。
法人の原点は、1986年に設立されたイルカ共同作業所(無認可作業所)だ。1979年の養護学校義務化が実現した後、卒業生たちの職場づくりが全国的に広まったうねりの中で、名古屋市港区に住む障がい児を持つ親たちが集まってスタートした。1990年に社会福祉法人格を取得したあとは、地域ニーズに沿って次々と新たな事業所が立ち上がり、現在の体制へと整備されている。
しおかぜ作業所は、そのなかでも「働くこと・工賃向上」を強く意識した事業所である。作業の中心は、地域の高齢者に向けた配食弁当。月額平均工賃は、一時金も含めると約35,000円である(令和6年度実績)。障がいのある人が心を込めて作った弁当を、生活介護事業所の利用者たちが職員と共に配達するというユニークな取り組みについて、詳しいお話を伺った。


栄養バランスの取れた弁当を、毎日300食製造
しおかぜ作業所が厨房で毎日作っているのは、管理栄養士によってしっかりと栄養計算された日替わり弁当だ。1日に作る量は、約300食。そのうち、40~60食が港区内在住の一人暮らし高齢者(介護保険制度等を活用した配食サービス)、地域の会社、クリニックに宅配するもので、残りが法人内事業所の給食(100食/うろじの家、イルカ作業所)、しおかぜ作業所の給食(60食)他事業所職員の昼食(10食)、港区役所での販売(20食)、高齢者(20食)グループホーム夕食(6拠点分)となっている。
厨房の仕事は、朝7時からスタートする。早番の職員2名が仕込みを始め、早番の職員・利用者は8時半に合流。9時には全員が参加して、そこから10時半までの間に、ご飯や主菜・副菜の盛り付けを行っていく。高齢者向けのため、刻みやアレルギー対応(青魚や鶏肉などの一部食材)まで行っているため、この時間は、厨房が一気に慌ただしさを増す。
そして10時半より、車両6〜7台による配送がスタートするのだが、注目すべきは配送に生活介護の利用者が同行している点である。
「B型の利用者は調理のみで、配送作業は生活介護の利用者が担っています。区分5〜6の重度の方が多いですが、配達を通して弁当事業に携わり、力を発揮してくれています。お弁当はすべて手渡しする形をとっている(見守り機能も併せて提供)ので、利用者さんがお客さんとコミュニケーションを図れる絶好の機会なのです」と、管理者の小木曽南さんは説明する。
そうはいっても、生活介護事業所を利用する重度の障がい者である。弁当をしっかり持てずに揺らしてしまうため、中身が崩れてお客さんからクレームがあったことも過去には何度かあった。それでも利用者に配達してもらうという方針を変えなかったのは、「どんなに重い障がいがあっても、仕事を通してひとりひとりが主人公になって輝ける場所を作りたい」という事業所としての信念があったからだ。
もちろん、良い出会いばかりとは限らない。いつも温かい声で迎えてくれる高齢者が家から出てこない時には、親戚やケアマネージャーに電話連絡をする。その結果、転倒や体調不良で動けなくなっていたこともあれば、亡くなっていたことが判明することもある。


合同庁舎の食堂運営や、オリジナル製品づくり
弁当の配食以外にも、しおかぜ作業所が取り組む作業はある。ひとつは、名古屋港湾合同庁舎の食堂運営である。基本的なメニューは、日替わり定食とカレーなどの2種類だ。日替わり定食のおかずは弁当の主菜・副菜をそのまま活用し、鍋に入れて車で移動。現地の食堂で、職員1名と利用者3名が分担して配膳を行っている。
「合同庁舎の職員さんは全部で約60名。お昼の休憩時間に一気に殺到するので、食堂はいつもてんてこ舞いになります(笑)。利用者さんの中でも熟練したエース級を投入しないと、とても対応できません」と、小木曽さん。
食堂の仕事には、代金の回収もある。自動販売機が設置されているわけではなく、1食600円の食事代を会計していくのだ。これを担当するのも、利用者の役割である。釣り銭計算に戸惑っていると、長い渋滞ができてしまう。職員ですら焦ってしまうこの仕事を、難なくこなせる利用者がいるのが素晴らしい。対応できるのは1名のみだったため、最近やっと新たな候補者が現れ、訓練を積み重ねているところだ。
もう一つの作業が、刺繍タオルというオリジナル製品づくりである。生活介護の利用者のうち、内部疾患等で外出が難しい利用者にも、就労機会を作りたいという目的で始めた取り組みだ。
主に利用者が描いた作品をデータにして、業務用ミシンに取り込み、ハンカチやタオル生地に刺繍する。区役所で弁当と一緒に販売するほか、港区内の保育園・幼稚園の卒業記念として小型ティッシュとの箱入りセットを、社協経由で大量発注(950セット)してもらったこともある。とても可愛いタオルなので、カスタムデザインのオリジナル刺繍タオルを、近隣住民から発注してもらうケースも増えつつあるらしい。


ディアでも注目を集めた、わーくす昭和橋の「肉まん」
最後にみなと福祉会を代表する製品として、わーくす昭和橋で製造されている著名な肉まんについても触れておきたい。「名古屋招福肉まん」という名のこの商品は、名古屋市中川区発祥の「野崎白菜」ブランド化プロジェクトに参加したのが開発のきっかけだった。中華の鉄人・故・陳建一氏の兄弟子だった錦城さんの指導を受け、本格的な中華肉まんの製造法を伝授されたのである。
愛知県産の小麦粉きぬあかり、愛知産の野崎白菜、知多三元豚、名古屋コーチンを使用し、化学調味料無添加、もっちりとした食感の皮も美味しい…と、発売以来、その味は大評判となった。名古屋商工会議所の出店審査会による食品担当者の厳しい審査もクリアし、松坂屋の地下食料品売り場への催事出店も実現。この時には、催事期間中に4,000個が完売したという。
「招福八丁肉まん」、「招福コーチンてりやきまん」などのバリエーションもある(1個350円〜)。また、名古屋市の返礼品として登録している「招福カレーコーチンまんセット」(寄付額10,000円以上)は、全国ネットの人気グルメテレビ番組でも何度も取り上げられ、大人気になった。
「メディアで取り上げられて話題がピークになったときには、肉まんだけで売上は1,000万円を超えたこともあります。さすがに最近は落ち着きましたが、それでも相変わらず人気の商品です」と、石川理事長。現在は、岐阜楽市、あつたnagAya等のアミューズメント施設でも取り扱われるなど、すっかり名古屋を代表するグルメの1つになっている。
このように、主に食を通じて障がいのある人が「働く」「地域で輝く」ことを目指してさまざまな活動を続けているみなと福祉会。今後も工賃向上と地域貢献を両立させながら、新たな挑戦を重ねていく。


(写真提供:社会福祉法人みなと福祉会、文・戸原一男/Kプランニング)
【社会福祉法人みなと福祉会】
https://www.minato-fukushikai.jp
※この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時(2026年05月01日)のものです。予めご了承ください。