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社会福祉法人はらから福祉会(宮城県柴田町)

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はらから福祉会の概要

はらから福祉会は、蔵王すずしろ(就労継続支援A型事業・就労継続支援B型事業)、蔵王すずしろ従たる事業所:食彩工房はらから(就労継続支援B型事業)、はらから蔵王塾(就労移行支援事業、自立訓練事業)、びいんず夢楽多(就労継続支援B型事業)、みずきの里丸森(就労継続支援B型事業)、登米大地(就労継続支援B型事業)、えいむ亘理(就労継続支援B型事業)、みお七ヶ浜(就労継続支援B型事業)、くりえいと柴田(就労継続支援B型事業)、らぽるの森(「くりえいと柴田」の施設外就労先)、そして県内10カ所のグループホーム等を運営する社会福祉法人である。

1983年に無認可作業所(はらから共同作業所)としてスタートして以来、「障がいを有する者も、そうでない者も、おなじ『はらから(同胞)』である」という考え方のもと、街づくり、働く場づくりをテーマとして活動してきた。

「障がいのある人たちが安心して暮らせるためには、年金と合わせて月額15万円が必要である」とし、月額工賃目標を7万円に設定。知恵を出し、それがどうしたらできるようになるかを試行錯誤していく。法人内のすべての施設において、そんな方針が徹底されている。

蔵王すずしろの油揚げ部門が独立した「びいんず夢楽多」

はらから福祉会と言えば、蔵王すずしろの豆腐が有名だ。宮城産大豆(ミヤギシロメ)と塩田にがりを使い、大豆の持つ甘みと風味を活かした豆腐は、今や宮城県を代表するブランド豆腐となっている。メディアで紹介されることも多いが、今年(2018年3月)にはTBS系列の人気番組「マツコの知らない世界」で木綿豆腐が紹介され、全国から問合せや注文が殺到している。

びいんず夢楽多は、そんな蔵王すずしろの油揚げ部門を独立させて、2002年に設立された。その経緯を、所長の佐藤昭さん(64歳)は次のように語る。

「蔵王すずしろで作っている豆腐はとても美味しいので、油揚げの売上も好調でした。そろそろ豆腐製造の片手間作業では厳しいと感じていた時に、隣町の村田町(びいんず夢楽多が現在建っている町)からも、『転作大豆を加工する障がい者の事業所をつくってほしい』との要請もあり、油揚げを主力商品にした新施設を立ち上げることになったのです」

そんな経緯もあり、事業所名にbeans(豆)を入れた。夢楽多むらたは、村田村の当て字である。「夢を求めて、楽しく、多くの工賃をめざそう」そんな思いが込められたネーミングだ。

生協のバイヤーに見いだされ、事業が一挙に拡大

もちろん設立当初は、油揚げを主にした事業はなかなか上手くいかなかったという。主な販売先は、豆腐の顧客であったスーパーや全国の障がい者施設。その他、村田村の物産館で土日に細々と販売活動を行っていたのが実情らしい。事業が一挙に拡大したのは、みやぎ生協のバイヤーがたまたま「みそづけ油揚げ」を買ってくれたことがきっかけだと、副所長の高橋健太郎さん(38歳)は言う。

「油揚げ専門なので、ウチの商品はいろんなアイテムが揃っています。味噌で味付けした『みそづけ油揚げ』は、大人気商品の一つ。そのまま焼いて食べてもいいですが、野菜と炒めると抜群に美味しいです。物産館でこれを購入したみやぎ生協の方が、『これは美味しい! ぜひ生協でも取り扱いたい』と言ってくださったのです」

みやぎ生協は、組合員数70万人以上を誇る、大型生協である。県内世帯の約73%が加入していると言われている(世帯加入率は全国一)。そんな生協が積極的に売り出してくれたわけだから、びいんず夢楽多の油揚げ事業は一挙にステップアッブしていく。みやぎ生協ではすでに大揚げ(三枚入り)を取り扱ってもらっていたが、当時は比較的珍しい味付け油揚げという商品に、お客さんが飛びついたのである。さらにここを拠点として、東北6県(山形・秋田・福島・岩手・青森・宮城)の生協へと取り扱いが広がっている。現在もびいんず夢楽多の事業売上の3分の1は、生協関係が占めているのだという。

氷感庫の導入により、作業工程が激変した

油揚げというのは、賞味期限が非常に短い食品である。とくに生協に納品するためには、客先に届いてからの賞味期限を少しでも長くするために、当日製造の商品を11時までに納品しなくてはならない。そのため製造時間が限定され、注文数が多くなると作業スタート時間は必然的に早くなる。午前2時出勤で作業を行う職員が必要になった。非常に厳しい労務環境だったが、売上確保、利用者工賃確保のために、一時期はそんな製造体制をとったという。

さらにみそづけの油揚げが生協で取り扱われるようになると、本来は公休日の月・日曜にも製造を行う必要が出てきたため、数人の利用者と職員で対応してきた。「しかし、もっと多くの利用者に仕事に関わってもらいたい。もっと効率的に製造を行いたい。そんなテーマでいろいろ模索していたときに、法人の執行部が氷感庫のことを知ったのです」と、佐藤さん。

氷感庫とは、特殊な静電エネルギーによって0°C付近を中心に食材の長期保存と熟成を可能にした、新しい保存システムのことである。マイナス温度になっても凍らないため、氷感庫から出した日を製造日にでき(氷感庫で保存できる期間は決まっている)、作り置きが可能になった。約900万円もする機材だが、理事長、就労支援部長、当時の副所長が見学・研修を行い、思い切って自己資金にて購入した。氷感庫の導入によって、びいんず夢楽多の作業風景は一挙に変貌したという。

「現在の職員の出勤体制は、①生地班(6時〜)、②揚げ班(5時〜)、③加工班(7時〜)、④出荷班(7時〜)の4つに分かれています。利用者は、早出の8時半から30分ずつずらした三班に分かれていて、出勤次第、自分の担当作業に合流するのです。あらかじめ作り置きして保管できますから、突然の発注増にもいつでも対応できます」(高橋さん)

7万円の工賃をめざして、挑戦は続いていく

現在(2017年度)のびいんず夢楽多の年間事業売上は、8,370万円(油揚げ:6,450万、食品販売:1, 920万)である。利用者の月額平均工賃は、48,474円となっている。B型事業所として宮城県内でもトップクラスの実績ではあるのだが、はらから福祉会としての目標工賃はあくまで7万円。まだまだ途中経過にすぎないと、佐藤さんたちは今後の展望を語る。

「もちろん目標を達成するのはたやすいことではありません。でも、7万円という数字をめざすのが、はらから福祉会で働く私たちの誇りです。できる可能性を必死になって探し、2021年までには実現できるように頑張っていくつもりです」

具体的には、卸し一辺倒から、少しずつ直接販売の売上割合を増やそうと試みているそうだ。地域の人たちに「びいんず夢楽多」の名前と、油揚げ製品のことを知ってもらうためのイベントとして、「できたて油あげの日」を定期的に開催するようになった。

「昨年度、実験的に3回実施したところ、揚げたての油揚げが買えるとあって、大好評でした。1人で10個以上も買っていただけるお客さんが、たくさんお見えになりました。今年からは、毎月第二土曜日に定期開催することに決定。このイベントで、毎回、油揚げを1,000枚売ることを目標にしています。専用のチラシを作って、村田町4,000戸に広報誌と一緒に配布してもらっているのですよ」と、高橋さん。

美味しい製品づくりにこだわって、油揚げだけで成長を続けてきたびいんず夢楽多の取り組み。これからも大きな目標をめざして、法人内の事業所とも協力し合いながら、着実に前に向かって進んでいくことだろう。

(文・写真:戸原一男/Kプランニング

(写真提供:びいんず夢楽多)

社会福祉法人はらから福祉会(宮城県柴田町)
http://www.harakara.jp

※この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時(2018年07月01日)のものです。予めご了承ください。